2015年11月17日火曜日

ルイスの転換点に想う

鍋監督は常々「本当なら、もっと前、前でプレッシングを仕掛け、そのまま攻め切りたい・・・」と語っています。そして「しかし、現状でそうするとバランスが崩れ失点する機会が多い・・」とも語っており、現状の「重心が後ろの戦い方」は、止むにやまれぬ選択のようです。

考えてみれば、テグ政権のJ2時代から、ある程度中心選手は固定し戦術も熟成。昇格を見据えながらも、目標はそこではなく「J2で優勝して昇格し、残留、リーグ上位の力を付け、あわよくばタイトル、そして5年以内にACL」とチームビジョンも明確でした。最初は「そんな簡単に行く訳が・・」と思いつつも、結果としてACLにも参戦。サイクルとしては、ここが一つのピークでしたな。

ピークっていう言葉で今思い出したワードが有って、それは大学のゼミで習った「ルイスの転換点」であります。簡単に「ルイスの転換点」を説明すると・・

開発経済学上の概念で、農業から工業への労働力の移行が進み、農業の余剰労働力がなくなった段階で、工業化が進むと、工業部門における労働力不足が発生し、賃金が高くなっていく。それによって、農業の余剰労働者は、高い賃金を求めて工業へ移っていく。ある地点まで行くと農業部門の労働者の余剰がなくなる。この地点がルイスの転換点と呼ばている。

ルイスの転換点を超えると、工業部門では、農業の余剰労働者が底をついているため農業部門の労働力を減らす形で労働力を確保するしかなく、さらに賃金水準を上げる必要が生じる・・・ってとこらしいです。つまり、ある程度市場(チーム)が成熟してくれば賃金の上昇はしょうがなく、それが出来ないと厳しくなっちゃうよ・・ということであります。

ベガルタで言えば、J1からJ2へ移行し、労働者(主力選手)の高齢化と共に、チームのサラリーキャップの余剰は縮小。この時期、チーム予算が飛躍的に増加出来れば良かったのですが、あえなく撃沈。結果として、主力選手を引き留めるため賃金は上昇、その余波は残りの選手のサラリーに影響してきます。

フロントからすれば、チームの主力をキープする為には「ある程度の増額」はマスト。しかし、全体の総額に大きな変化がない以上、そのしわ寄せは当然、他の選手に降りかかります。つまり、12年に優勝争いしたシーズンが「ワンサイクルのピーク」とするなら、次のサイクルを軌道に乗せるためには、12~13年のシーズンにチーム予算編成を見直し、「ネクスト主力級の選手(他チームからの移籍選手も含む)」に対しても、賃金を増額する必要が有ったと思っています。

しかし、それが出来なかった・・。12シーズン⇒13シーズンに至っては、大きな補強も無く、加入したのは「石川・蜂・勇人・ヘベルチ」ぐらい。チームが次の上昇カーブへ行く為には、この年にチーム予算を増やし、主力選手や準主力選手に対して賃金をアップさせる必要があったはず。だが、この年、チームとして新たなステージに行く為に執った戦略は「賃金の増加(新たな選手の獲得)」ではなく、ベガルタ仙台レディースという新たなフォーマットの追加だったのです。

予算が潤沢ではないチームにとって、新たな主力級の選手の獲得や、現有戦力への賃金増加、更にはレディースという決して短期的には利益を生まない枠組みの追加などを円滑に回す事など不可能です。前社長は「レディースの予算はトップチームとは別なので、何の問題も無い」と語っていましたが、別枠として組み込んだ予算、その全てをトップチームに注ぐ事が出来たなら、現状の様な凋落にはならなかったのでは・・・とベガルタンは考えています。

もっとも、だからといって「レディース反対!!要らねー!!」というスタンスではありません。レディースも、大切な我々の家族です。ただ、ベガルタンと前社長のチーム構想の時間軸は若干違っています。前年に優勝争いし、ACLを戦う事になった13年シーズンこそ、あらゆる資源をトップチームに注げば・・・まっ、今となっては、どうしようもありませんな。

しかしながら、チーム予算の総額が抑えられてしまった以上、他の選手や若手にとって、出番と賃金を今以上に求めるのなら、チームを去るしか無くなります。13年シーズンでテグは去り、新たな監督も就任。チームには見た目にも変革を断行しましたが、あえなく撃沈!!結局は鍋監督が就任し、先祖がえりしたかのような「堅守賢攻」によって、チームを新たな成長曲線へと誘導しようと頑張りました・・が、あえなくこれも撃沈!!それが現在の「重心が後ろ」のゲーム運びなのです。


今シーズンの終わりに、チームは来期に向かって、どのような戦略を獲るのでしょうか?大きく変更はせず、現有戦力の積み上げかもしれませんし、ドラスティックにベテラン選手の退団があるのかもしれません。だからこそ、今のメンバーで戦う一試合、一試合が大切になってきます。だからこそ、頑張って欲しいですな。

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