2014年11月16日日曜日

シーズン5

 佑香さんの新たな旅立ち

その電話は、ゴルフコンペの懇親会の時に掛かって来た。後輩に帰りの車を運転させる事を良い事に、ベガルタンはビール&ハイボールをガブ飲み状態。そうですなぁ~~ここがドイツならば、間違いなく隣りどうしで肩を組んで、ビール祭りの時に必ず歌うと言う「乾杯の歌 Ein Prosit」を唄っているはずです。

超酔っ払いという状態の時、電話を掛けてよこしたのは佑香さんでした。瞬間「あれっ?この間、清次先輩の7回忌は済んだから、あぁー、今度は恵美さんの7回忌かなんかの連絡だな」と悟ったベガルタンは、騒がしい懇親会場を出て、イケメン俳優のような渋い声で電話に出ました。

自分「もしもし、竹之内豊です」
佑香「えっ、佑香ですけど。ひょっとして、飲んでますか?」
自分「間違いました。河島英五です。お前が二十歳になったらぁ~~」
佑香「二十歳は過ぎましたけど・・また、掛け直した方が・・」
自分「ごめんごめん、悪気はないんだよ佑香ちゃん。ただ、チョットだけ、酔ってるだけなんだ」
佑香「そうですか、それはタイミングが悪くて、すみませんでした。なので、用件だけを手短に話します」
自分「なに、どうしたの?」
佑香「10/26の柏戦、私、ユアスタへ行きたいんですけど、ご一緒できますか?」
自分「いいとも!!」
佑香「それはありがとうございます。だけど、ベガルタンさん、これ、会社ならパワハラですよ?」
自分「ダメよ、ダメダメぇ~~」
佑香「失礼します。ブチッ、ツーツーツー」
自分「あれ、佑香ちゃん?佑香ちゃん?ン~~今日の佑香ちゃんは、ご機嫌斜めだな・・・・」
今、こうやって文章にすると、つくづく「俺って、最低の人間だよな」と思うよ。

後日、改めて佑香さんと連絡を取ったところ・・・
来年から千葉の病院で看護師として働くことになった。
現在同棲している彼氏さんと結婚する予定。
その彼氏さんはジェフサポ。
一緒に試合へ行くようになったらジェフが好きになった。
よって、ベガサポではなく、ジェフを応援してゆくつもり。
なので、最後に自分とベガの試合を観戦しながら、絶対スタジアムに来ているであろう両親にも、その旨を報告したい」
と言った事でした。それにしても、今どきの若者って、すぐに同棲して結婚までしちゃうんですな。

そんなこんなで佑香ちゃんと柏戦。先輩の聖地でもあるS北に陣取る。佑香ちゃんと、先輩夫婦の四方山話をしながら試合開始を待ちます。そして選手の入場、すると佑香ちゃんは、やおら立ち上がってジャンパーを脱いで戦闘モードへ。足しげくフクアリへ彼氏さんと通っているだけに、何気だけど様になっています。当然のように掲げるタオルは恵美さん、そして着用しているベガTは清次先輩の遺品。それを隣で観ていたら、不意に瞳という名のダムが決壊。先輩、恵美さん、観てますか?佑香ちゃんは、すっかりレディーになりましたよ。

試合は御存じのように、ベガルタがロスタイムでの敗戦。スタジアムは重い雰囲気。座りこんでベガTを脱ぐ佑香ちゃん。すると、佑香ちゃんは思い掛けない事をベガルタンに言ってきました。

佑香「ベガルタンさん、私、ベガルタを応援するのは今日が最後だと思って応援してました」
自分「じゃあ、明日からは・・・」
佑香「はい、心の底からジェフサポです」
自分「いやいや、そんな、かたくなになんなくてもいいんじゃない?J2では千葉を、そしてJ1では仙台を応援すればいいんだから」
佑香「それじゃあ駄目なんです。今、この時から、私の夢はジェフが昇格してベガルタにユアスタで勝つことです!!」
自分「えっ、その夢、何気に直ぐ、叶っちゃうような気がしないでも・・・」
佑香「つきましては、このベガTとベガタオルをベガルタンさんに貰って欲しいんです」
自分「それはいいよ、重過ぎるって」
佑香「いえ、ベガルタンさんじゃなきゃ駄目なんです。父と母、この二人の気持ちを背負えるのは、ベガルタンさんしかいません。お願いです、貰ってください」
自分「・・・その気持ちは嬉しいけど・・」
佑香「お願いします」
自分「分かった。分かったよ」
佑香「ありがとうございます。これで、何の心配もなく、千葉へ行けます」

佑香さんと別れ、車を運転するベガルタン。そして助手席には預かったベガTとタオル。この品々を見て「絆とは何なんだろうか?」と考えました。きっとそれは、与えられるものではなく、共有できる思い出が積み重ねられた事によって出来る“木の年輪”の様なものではないでしょうか?

良いシーズンの時には年輪は太く、悪いシーズンの時は狭くなる。しかし、全サポーターが一律に太くなったり狭くなったりするのではなく、それぞれがチームに対して取り組む姿勢により変動する。その総和こそ“絆”だと思ってます。互いに仲間の取り組みや姿勢を尊重し、毎試合応援する。そうして出来上がる信頼感が年輪として、個々の心に刻まれ、人間的にもサポーター的にも成長してゆく。“絆”とは、その成長の証しではないか?佑香さんから預かったベガTとタオルを見ながら、ベガルタンはこんな事を考えていました。


先輩、佑香ちゃんが敵としてユアスタへ来たら、ボコボコにしてやりましょうね・・・。

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