2013年7月19日金曜日

奥埜の育成型期限付き移籍を考える


奥埜が、V・ファーレン長崎(J2)へ育成型期限付き移籍することが決定したそうな。まあね、仙台に居ても試合に出れないんであれば、そして奥埜のように「将来は仙台の柱石を担って欲しい・・・」という希望を持っている選手であれば、現状の起用法(奥埜の場合は起用機会すら無いが・・)では「成長の為に経験を積む」事すら叶わない。その対策としてチームや奥埜が出した答えこそ「育成型期限付き移籍」だったのでしょうな。

いくら仙台や奥埜の方で「経験を積ませたい・・・成長したい・・・」と思っていても、その想いをウイン・ウインの関係で受け止めてくれる相手が居なければ、どうしようもありません。しかし幸いにして、奥埜を引き受けてくれるチームが現れました、それが長崎です。仙台からすれば「大変ありがたい・・」ということになるかもしれない「このレンタル移籍」ですが、仙台のみが利益を得られる商取引など存在しない以上、受け手である長崎にも当然のようにメリットがあるはずです。

長崎の現在の順位はプレイオフ県内の3位、ガンバや神戸には敵わないものの、新規参入チームと言う事を鑑みれば「大躍進」という表記をすることに躊躇など必要ありません。マジで、頑張っていますな。この大躍進で、チームは戦略の変更を余儀なくされたのです。長崎の社長は、昇格時のインタビューで「安定的な経営にもっていく。5年くらいをめどにJ1に昇格できれば」と決意を語っており、その行程に沿って「J1ライセンスの取得」も考えていました。

現在、長崎が持っているライセンスは「J2限定」なので、このままシーズンが終了してしまうと、2位なっても昇格出来ず、さらにはプレーオフにも出場できません。当然チームは「J2長崎が来季の昇格を見据え、J1ライセンスの申請を済ませた」ことをメディアに対してリリース。それによると「長崎は5月にJリーグの視察、ヒアリングを受け、申請に向けて解消すべき点などを含めて助言を受けていた。申請期限の30日を前に、申請書類を郵送した。長崎は日本フットボールリーグ(JFL)から今季J2に初昇格し、ここまで10勝6分け5敗の勝ち点36で3位。プレーオフ進出圏内にいる。現在はJ2ライセンスを所持するが、J1昇格とプレーオフ出場には、J1ライセンス取得が条件になる」とのことです。

この時点で、長崎はチームとして「今年昇格を狙っている」ということを公言しました。最初は「5年で・・・・」という行程を描いていたのですが、その行程が「ひょっとすると4年も短縮されるかもしれない・・・」という嬉しい誤算の中、チームはひたむきに頑張ってます。そんなチームに、シーズン途中から奥埜が移籍する・・・・。だとしたら、仙台からすれば「奥埜に経験を積ませたい・・・」という思惑が大きいこのレンタルも、長崎からすれば絶対に違うはずです。

仙台も以前は、かなりの頻度で夏場に選手を獲得しました。その全ての目的が「成績向上の為の助っ人」です。残留の為、昇格の為・・・その理由はチームが置かれている時々の状況によって変わってきますが、シーズン途中での獲得理由は「その選手の成長の為」と言う事など、ただの一度もありませんでした。ということは、奥埜を獲得した長崎の目的も自ずと見えてきます。長崎は、奥埜を助っ人になる可能性があると見込んで獲得したのです。つまり、入れ替え戦の時で言えば、ナジソンのような役割を彼に期待しているのでしょう。奥埜とナジソン・・・格は全く違いますが、借り手が彼らに抱く期待感に相違はありません。シーズン途中での移籍って、する選手にも、受け手であるチームやサポーターにも、非常に重たいモノなんですな。

私たちは高校の時、授業でアダム・スミスの資本論を勉強しました。それをJリーグに置き換えるとこうなります。

「市場経済において、各チームが自己の利益を追求すれば、結果としてリーグ全体において適切な資源配分が達成される。各チームが個人のみの利益を追求することは一見、リーグ全体にとっては何の利益も生み出さないように見えるが、各チームが個別の利益を追求することによって、社会全体の利益となる望ましい状況が「神の見えざる手」によって達成される。それによって需要と供給は自然に調節されるものだ」(資本論が正しいのなら、浦和が資金力に物を言わせて他チームの主力を引きぬくのも、ある意味リーグ全体の利益となるはずだよね)

奥埜をレンタルしたことで、仙台にはレンタル料が入り、彼には経験を積ませることが出来ます。その対価と同じくらいのメリット(利益)を、長崎とすれば奥埜に求める事でしょう。そのハードルは、我々が考える以上に高いものであるはずです。奥埜には、そのハードルを飛び越えて欲しいものですな。その結果として、彼が仙台へ戻るのもよし、請われて長崎に留まるのもよし。Jリーグが健全な市場経済下で運営されてあるのなら、全ては「神の見えざる手」によって自然に調整されるのです・・・。頑張れ、奥埜!!

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