2012年3月16日金曜日

ベガルタン、ディープに考える

今週の半ばから、本社勤務の後輩が社内の公休制度を利用して仙台に来ています。彼の名は山田、所沢出身のレッズサポだ。「何の為に来ているのか?」と山田へ問えば・・・「実は俺、ボーイスカウトの出身なんです。最近、ニュースで震災ボランティアの数が激減していると聞いた仲間から相談を受けまして、だったら微力ではありますけど協力しようじゃないか!!ということになり、4日間の予定でボーイスカウトOBたちでボランティアをしに来ています」という、被災地の住民が聞いたら涙なくしてはいられないような返答が返って来た。

ありがたい・・・本当にありがたい・・・。震災から一年という月日が経ち、ともすればボランティア活動の重要性なんて忘れ去られようとしている昨今、私の後輩が、そのような尊い活動をしに公休を使って来ているだなんて・・・。感動した私は、そんな山田に被災地を代表してお礼をすべく、ゴチで居酒屋へ誘ったのです。しかし、そんな誠意の宴会が、あんなにグダグタした討論会になろうとは、この時のベガルタンは知る由もありませんでした。

乾杯後、ボランティア活動の状況の話が終わると、そこはそれ、互いにフットボールをこよなく愛する仲間として、話題の中心は開幕戦での感想に移っていった・・・。

山田「いいっすよね、仙台は勝って。こっちは正直、広島に現時点での実力差を見せつけられました」
自分「おいおい、まだ一試合しかやってねーぞ。それに、監督を新たにした時点で、戦術や連携などに時間が掛かる事は皆知っているんだろ?広島が何年掛かって、今のサッカーに辿り着いたのかを知らない訳じゃねーだろうが?」

山田「その辺は微妙なっすよねー。少なくても去年の夏場頃よりは、観ていて希望は感じられるんっすけど、もちろん、良いサッカーをしている・・・と言う意味じゃなくて、我々が目指すべきスタイルが「薄っすら」とでも見えているという意味でね。去年なんて、荒れ狂う暗黒の海原を漂流していて夢や希望なんてありませんでしたから。広島とやってみて、浦和の目指そうとしているスタイルが、広島のサッカーのコピーではないんだろうけど、大まかな方向性としては『こんな感じなんだろうなぁ~~』と言うのが何となく分かったんです。『こんな感じ』がチョットでも分かるって、サポからすれば、物凄い安心感に繋がるんですよ。何度も言うけど、去年は『こんな感じ』を感じたこと自体、ただの一度もありませんでしたから」

自分「まあまあ、去年の事はいいから。薄っすらでも光が見えそうになって来たんだから、試合は負けたけど、それはそれで良かったじゃないか・・・」
山田「ただ、残念な事がありまして・・・って言うか、自分としては到底理解が出来ない事なんで・・・どう考えたらいいのか分からないです」
自分「何の事だ?」

山田「もしも、もしもですよ、リャンや関口が自分自身の判断でレベルの高いドイツリーグへ移籍したとします」
自分「ん~~リャンは考えられないけど、関口ならば有り得るかもな。でっ、それがどうしたんだ?」
山田「しかし、試合に出る事が出来ず、結果的に他のJリーグチームへレンタルとはいえ帰ってきました」
自分「帰ってきました」
山田「そしたらです、その帰って移籍したチームと仙台が開幕戦を戦うことになった時、先輩は関口に強烈なブーイングを浴びせたり、裏切り者呼ばわりをしたり、辛辣な断幕を掲げたりしますか?」
自分「選手紹介の時に「何だよ、この野郎、中途半端に帰ってきやがって・・」という意味でブーイングはすると思うけど、試合中は気にしないだろうし、裏切り者呼ばわりなんてしないよ。選手自身のチーム選択は、自らの意思で決める物だと思っているから。ただし、ヒサトの事を今でも「裏切り者」と呼んでいる知人もいるから、そう簡単に割り切れる問題ではないのかもね、愛が深ければ、憎しみも・・・だな」


山田「たぶん、槙野は広島で人気があったと思うんですよ。そんな彼が、自分の実力を試すべくドイツへ旅立ちを決意し、広島サポも複雑な想いは有るけど送り出した。しかし試合に出ることができず、1年で日本に戻り、戻った相手先が、昨年まで共に戦った監督が指揮するチーム・・・。心中穏やかでなくなる気持ちは分かるんですけど、やっぱ、出て行かれたチームからすれば「裏切り者」なんですかねー。そんな事を言い始めたら、移籍なんてしにくくなると思うんですけど・・・」

自分「個人的な考えだけど、俺はリャンや関口が他のチームへ移籍しても、絶対に「裏切り者」呼ばわりはしない。チームと選手とを結び付けているのは「契約書」であり、サッカー選手を砕けた表現で言えば「やりようによっては高いサラリーが貰える契約社員」である以上、我々サポの姿勢とすれば「契約期間内の選手」を応援するしかない。しかし、サポと選手を結び付けているのは「契約」ではなく、「絆とか気持ち」だから心情的に割り切れない場合も当然出て来る。槙野の件で言えば、サポ心情として割り切れなかったんだろうね」

山田「そうかもしれないですね・・・」
自分「例えば、長谷部や細貝が1年で日本の他チームへ移籍したら、心中穏やかじゃないレッズサポも多いんじゃないの?阿部だって、他チームへ移籍したら、文句を言う奴も出て来ると思うよ」
山田「でも・・・・」
この後2時間、この件でグダグダ言い合う山田でした。

チームと選手を結び付けているのは「契約」であり、サポと選手を結び付けているのは「絆や気持ち」である。この全く異質な物を、対等に論じる事など不可能である事は明白で、そのことが、今回の件に対する答えを一層難しくしている。ただし、それら全ての複雑な考えや事象が、サポーター人生としての年輪となり、後世の後輩サポへと受け継がれて行く。ベガルタ仙台には10年分の年輪しかないが、ガンバや鹿島には20年分の年輪があり、欧州のチームには100年分の年輪があるチームも珍しくない。チームは、サポーター一人一人の複雑な心境を年輪に重ね合わせて成長していき、その年輪の数の総和こそ「本当の意味でのチーム力」であると思っています。

明日はマリノス戦、ビートマリノス!!

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